美容医療の同行という仕事を、初めて聞いた方は、
「韓国語と日本語ができれば、通訳できるのでは?」
と思うかもしれません。
私自身も、この仕事を始めた頃は、日本語で病院の説明を伝え、お客様の質問を韓国語に訳すことが大切だと考えていました。
もちろん、言葉を正確に伝えることは今も基本です。
しかし、韓国美容医療の現場で日本人のお客様を支えてきた中で、少しずつ分かったことがあります。
日本語が話せることと、美容医療の現場でお客様を支えられることは、同じではありません。
言葉を訳せても、
・誰の判断なのか
・何が変更されたのか
・お客様が本当に理解しているのか
・事前に相談していた希望とつながっているのか
を区別できなければ、お客様は日本語で説明を聞いても、納得して選べないことがあるからです。
最初は「正しく訳すこと」が一番大切だと思っていました
医師が話した内容を日本語に訳し、お客様の質問を韓国語で伝える。
それができれば、言葉の不安は解消できると思っていました。
実際、日本語で説明を聞けることは、お客様にとって大きな助けになります。
しかし現場では、正確に訳しただけでは解決しない場面がありました。
例えば、お客様が、
自然な感じにしたいです。
と話したとします。
「自然に」という日本語を、そのまま韓国語へ訳すことはできます。
けれども、その方が考える「自然」が何を意味しているかは、言葉だけでは分かりません。
・家族にも気づかれたくない
・周囲には分からなくても、自分では変化を感じたい
・不自然な輪郭にはしたくない
・大きな変化ではなく、疲れて見える印象を整えたい
同じ言葉でも、希望している結果は異なります。
通訳として言葉を置き換えるだけなら、「自然にしたい」と伝えて終わります。
しかし美容医療同行では、その言葉を病院とお客様が同じ意味で理解しているかまで確認する必要があります。
医師の判断と、病院のメニュー案内を分ける必要があります
美容クリニックでは、複数の人が相談に関わることがあります。
・受付スタッフ
・カウンセリング担当者
・医師
・看護師や施術スタッフ
・通訳
・同行するコンシェルジュ
それぞれの説明には、異なる役割があります。
カウンセリング担当者は、病院で受けられるメニューや価格、キャンペーンなどを説明します。
医師は、実際の状態を診察し、施術の適応や医療的な注意事項を判断します。
施術スタッフは、決定した内容に沿って準備や施術後の案内を行います。
ところが説明を一度に聞くと、お客様にはすべてが「病院から勧められた施術」に見えることがあります。
その時に必要なのは、ただ日本語に訳すことではありません。
これは医師の診察に基づく提案なのか。
病院で受けられる選択肢として紹介されたものなのか。
今回必ず受ける内容なのか。
次回に分けて考えられる内容なのか。
を区別して確認することです。
同行者がこの違いを理解していなければ、自分の意見を医師の判断のように伝えてしまう可能性もあります。
JMJが最も注意しているのは、ここです。
お客様の希望、病院からの案内、医師の判断、JMJによる情報整理を混同しないこと。
これが美容医療同行に必要な専門性の一つだと考えています。
「おすすめです」を、そのまま伝えるだけでは足りません
美容医療のカウンセリングでは、
こちらがおすすめです。
という説明を聞くことがあります。
しかし、「おすすめ」という言葉だけでは、その根拠が分かりません。
・医師が現在の状態を見て提案したのか
・人気の施術として紹介されたのか
・キャンペーン中のメニューなのか
・お客様の希望に近い選択肢なのか
・複数ある方法の一つなのか
によって意味が変わります。
通訳が、
これがおすすめだそうです。
とだけ伝えると、お客様は「自分にはこれが必要だ」と受け取るかもしれません。
そこで美容医療同行では、
どのような目的で提案された施術ですか?
と病院へ確認することが必要になります。
これは医師の判断に口を出すことではありません。
病院が伝えたかった意味を、お客様が判断できる形で理解するための確認です。
お客様が「分かりました」と答えても、理解できているとは限りません
日本人のお客様の中には、病院の流れを止めたくないと考える方がいます。
医師やスタッフを待たせたくない。
何度も質問すると迷惑かもしれない。
自分だけ時間を使うことが申し訳ない。
そう思い、十分に理解できていなくても、
はい、分かりました。
と答えることがあります。
現場で長くお客様を見ていると、言葉だけではなく、表情や間の取り方から迷いが伝わることがあります。
説明を聞くたびにうなずいているけれど、表情が少しずつ固くなっている。
最終金額が出た後、返事をするまでの時間が長くなった。
家族の方を見ながら答えている。
そのような時は、
今の説明で、もう一度確認したいことはありませんか?
と声をかけます。
通訳の仕事を、話された言葉だけに限定すると、この迷いを見落とすことがあります。
美容医療同行では、言葉が通じたかだけではなく、選べる状態になっているかを見ることが大切です。
事前相談を知らずに現場だけ同行するのは難しい
当日、病院でお客様と初めて会い、
「今日は何を受けますか?」
と聞くだけでは、十分なサポートが難しいことがあります。
美容医療の現場で提案された内容が、その方にとって無理のないものかを確認するためには、事前に伺った条件を知る必要があるからです。
例えば、
・今回最も気になっていること
・希望する変化
・避けたいこと
・帰国後の予定
・過去に受けた関連施術
・当日必ず病院を出たい時間
などです。
事前に「翌日から仕事なので、顔に目立つ反応は避けたい」と聞いていれば、当日の説明でもその条件を病院へ確認できます。
反対に事前情報がなければ、病院から一般的な説明を受けても、お客様の旅行や生活にどのような影響があるかをつなげにくくなります。
JMJが事前相談と現場同行を分けずに考えるのは、このためです。
施術時にも、一人ひとりの進行を確認します
JMJの同行サポートは、カウンセリングが終われば役割も終わるというものではありません。
施術前には、決定した内容がカウンセリングで聞いたものと一致しているかを確認します。
グループのお客様の場合は、
・一人は麻酔中
・一人は医師の施術中
・一人は別の管理中
・一人は会計や注意事項の確認中
というように、別々に進むこともあります。
その際は、JMJスタッフが院内を移動しながら、お客様お一人ずつの進行に合わせてサポートします。
複数の場所で同時に進む場合や、施術内容が多い場合には、サポートスタッフを増やして調整することもあります。
クリニックの規定上、施術室への入室が可能な内容では、施術時もお客様に付き添いながら必要な確認を行います。
ただし、入室範囲や施術中の同行方法は、クリニックの規定、衛生管理、施術内容によって異なります。
重要なのは、施術室へ入ること自体ではありません。
カウンセリングで決めた内容が、実際の施術まで正しくつながっているかを見ることです。
帰国後の連絡まで分かって、初めて同行がつながります
美容医療の同行は、病院を出た瞬間に終わるものではありません。
日本へ帰国した後に、
「薬の使い方をもう一度確認したい」
「施術後の写真を病院へ送りたい」
「次回の施術時期を聞きたい」
ということがあります。
この時、当日どの施術を受けたのか、どのような説明があったのかを知らなければ、病院へ正確につなぐことが難しくなります。
事前相談、当日のカウンセリング、施術、帰国後の連絡が同じ流れとして管理されていることが必要です。
JMJは症状を診断したり、薬を変更したりすることはできません。
医療的な判断は、施術を行った病院や現在地の医師が行います。
JMJが行うのは、お客様から伺った内容を整理し、必要に応じて病院へ確認することです。
専門性とは、施術をたくさん知っていることだけではありません
美容医療同行に詳しくなるためには、機器名や薬剤名を学ぶことも必要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
施術名を多く知っている人が、お客様に合う施術を決められるわけではないからです。
私が考える美容医療同行の専門性は、次のようなものです。
・病院の説明と医師の判断を区別できる
・お客様の希望を診断名に変えない
・自分の意見を医療判断のように伝えない
・事前相談と当日の変化を把握する
・お客様が理解できていない時に気づく
・必要な内容を病院へ確認できる
・施術前から帰国後まで情報をつなぐ
・自分の役割を超えない
特に重要なのは、最後の点です。
経験が増えるほど、自分が答えてはいけない内容も分かるようになります。
美容医療同行の専門性とは、何でも判断できることではありません。
どこまでがJMJの役割で、どこからが医師の判断なのかを守ることでもあります。
スタッフに伝えているのは、同じ話し方ではありません
JMJは、代表Mijung一人だけが同行する形から、研修を受けたスタッフとチームで支える形へ移行しています。
その時、スタッフ全員に私と同じ話し方や性格を求めているわけではありません。
人によって、お客様への声のかけ方や得意な部分は異なります。
ただし、変えてはいけない基準があります。
・誰の説明かを区別する
・お客様の希望を勝手に変えない
・医療判断をしない
・分からないまま施術へ進ませない
・現場だけで判断が難しい時は共有する
・帰国後の連絡までつなぐ
これは、日本語が上手であることだけでは身につきません。
実際の相談と現場を経験し、どのような時に確認が必要になるかを学ぶ必要があります。
日本語通訳がいる病院でもJMJを利用する理由
病院に日本語スタッフや通訳がいる場合、その方々は病院の説明を伝える重要な役割を担っています。
JMJは、病院の通訳者と競争するために同行するわけではありません。
病院側の日本語担当者は、病院のメニューや院内の流れをよく理解しています。
JMJは、お客様が事前に相談していた希望や旅行条件を知り、病院の説明とつなぐ役割を持っています。
つまり、見ている位置が異なります。
病院の日本語対応がある場合でも、
・複数の病院や施術を比較してきた
・事前相談から同じ内容を共有してほしい
・当日の変更点を確認したい
・施術後や帰国後まで連絡をつなげたい
という方には、JMJ同行の意味があります。
日本語ができる人ではなく、役割を理解した人が同行する
長く現場に立つ中で、私は何度も、
「言葉は伝わっているのに、理解がつながっていない」
という場面を見てきました。
日本語で説明を聞けたことと、自分が何を選んだか理解できたことは同じではありません。
だからこそ、JMJでは同行スタッフを、単に日本語ができる人として考えていません。
お客様の希望、病院の説明、医師の判断を分けて理解し、必要な場面で確認できる美容医療コンシェルジュとして育てています。
まとめ
美容医療同行に日本語能力は必要です。
しかし、日本語が話せることだけでは十分ではありません。
現場では、次の力が必要になります。
1.お客様の言葉の背景を理解する
2.医師の判断と一般的なメニュー案内を区別する
3.事前相談と当日の提案をつなぐ
4.お客様が理解できているか確認する
5.施術時も一人ひとりの進行を把握する
6.帰国後の連絡まで情報をつなぐ
7.医療判断をせず、自分の役割を守る
美容医療同行の目的は、病院の説明を日本語へ置き換えることだけではありません。
お客様が医師の説明を理解し、ご自身の希望や条件と照らし合わせて、納得して決められる状態をつくることです。
それは、日本語の上手さだけでは身につきません。
病院とお客様の両方を見ながら、現場で何を確認すべきかを積み重ねてきた経験が必要です。
JMJが美容医療同行を、単なる通訳とは別の専門的な仕事として考えている理由です。
※JMJは医療機関ではありません。診断、施術の適応、治療方法、薬剤、処方などの医療的判断は、医師および医療機関が行います。
